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糖尿病教室

糖尿病と心臓・血管疾患(第1部)

講師 亀岡病院 理事長

大槻 克一

 

 

糖尿病のおさらい

私たちの体の中では、空腹時には血糖値が下がり過ぎないように、肝臓から一定のブドウ糖が放出されます。一方、食事を摂った時には、腸で吸収したブドウ糖をグリコーゲンに合成して肝臓に貯蔵したり、血液中に出たブドウ糖を筋肉や脂肪組織に取り込んだりして血糖値の上昇を抑えます。このような調節を行っているホルモンには、血糖値を下げるインスリン(図中のカウボーイ)と血糖値を上げるグルカゴンなどがあります[図1]。

糖尿病になるとこのインスリンの働きが低下して、空腹時には、肝臓からグリコーゲンの分解によるブドウ糖の放出が亢進し、また、筋肉や脂肪組織でのブドウ糖の取り込みが低下するため血液内のブドウ糖が多くなり血糖値が高くなります。さらに、食事をすると肝臓でのグリコーゲン合成が起こらずに大量のブドウ糖がそのまま血液中に放出され、また、筋肉や脂肪組織でのブドウ糖の取り込みが起こらないため血液内のブドウ糖は急激に増加し、食後血糖値の上昇をきたします[図2]。

 

図1・図2

 

糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病がありますが、ほとんどの方が2型糖尿病です。1型糖尿病というのはインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されることによって、インスリン合成や分泌の絶対的な欠乏が起こる病気です[図3]。

2型糖尿病の発症には遺伝が影響しています。しかし、遺伝因子を持っているからといって必ず発症するわけではなく、肥満、運動不足、ストレスなどの環境因子が加わって、膵臓からのインスリンの分泌が障害されたりインスリンが利きにくい体質になったりして、空腹時や食後の血糖値が高い状態になります[図4]。

 

図3・4

 

糖尿病に合併する心臓・血管疾患

インスリンの発見や薬の進化などで、三大合併症といわれる網膜症、腎症、神経障害もある程度抑制ができるようになりました。そのような中で現在、最も注目すべき合併症は、脳血管障害(脳梗塞・脳出血)、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)、閉塞性動脈硬化症などの大血管障害です[図5]。

 

図5

 

休まず働く心臓には十分な酸素と栄養が必要で、冠状動脈という自分専用の動脈を持っています。この冠状動脈が動脈硬化で細くなると狭心症、つまってしまうと心筋梗塞をおこしてしまいます[図6・7]。

 

図6・7

 

血管壁に存在するコレステロールを多く含んだ粥状の動脈硬化病変(プラーク)が破裂すると、血栓ができ、これで血管がつまると急性心筋梗塞になります。つまらないまでも、血栓ができたり解けたりしている状態を不安定狭心症といいます。急性心筋梗塞に移行する可能性が高い危険な状態です[図8]。

糖尿病の他に、高血圧、高脂血症をもっておられる方、タバコを吸われる方は、冠動脈疾患をおこす危険度が高く、特に注意が必要です。 閉塞性動脈硬化症というのは、足へ行く太もも付近の動脈が、細くなったり、つまったりして足へ十分な血液が流れないためにおこります。この病気で下肢を切断しなければならない人が年間2、000人もいます[図9]。

 

図8・9

 

症状は足の冷感、しびれ感を感じるのみの軽いものから、一定距離を歩くと足がだるくて歩けなくなる間欠性跛行、さらには、じっとしていても足先が痛い安静時疼痛と進み、最終的には足に潰瘍や壊疽ができてしまいます[図10]。

 

図10

 

脳血管障害に関しては、HbA1c(糖化ヘモグロビン)が高いほど脳卒中の発症リスクが高くなることが示されています[図11・12]。日々の血糖コントロールが極めて重要であるということになります。

図11・12

 

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